──── こころの風景と型絵染 ────
まず、和紙に柿渋を塗り重ねて作られた渋紙(現在では合成のものが主)を彫り、型紙を作ります。つぎに、その型紙を布の上に重ね、お米から作られた糊を置きます。型紙を布から上げると切り抜いた形に糊が残ります。
その後、糊が乾くとその部分には染料が染み込まないので、型紙のデザイン通りに模様を染める事が出来るというわけです。
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型染の材料は日本で採れるものばかり、まさに風土に根付いた技法と言えます。
型絵染とは、その技法を用いて絵画的な文様を染めたものです。型染は基本的に白黒をハッキリさせる、明快な技法です。従って一見微妙な、あるいは重層的な表現は苦手のように思われます。
しかし彫り残す形と彫り抜く形、そしてそこに差す色を工夫する事によって、他の技法にはない独特の表現が生まれます。
私にとってその面白さは、大学で型染を勉強して早30年近くを経ても、色褪せる事がありません。またその間、裏染や抜染の研究、沖縄県立芸術大学勤務時期には紅型から顔料の使用など新たな技術も学びつつ、独自の表現を模索して参りました。
それらの積み重ねから染め上げるモチーフも、自身の生活環境の変化の中で随分と広がりました。
新しい風景や事物と出会い、やがてそれが昇華され、自身の心象風景となる・・・。
今後も、更なるこころの風景に出会っていきたいと思っています。
→ 制作後の完成作品